楽譜に使う筆記具

2022年4月17日

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 楽譜への書き込みには製図用の鉛筆が良いです。色鉛筆は紙を変質させない、という意味では正解です。ボールペンは、油性のものだとインクが変質してしまうので保存に向きません。しかも、ペン先が硬いので裏のページに凹凸ができてしまいます。蛍光ペンは褪色します。

 製図用の鉛筆は、どこでも売っていて手に入りやすいのは、なんといっても国産品。国産高級鉛筆の代表格には「トンボのMONO100」「三菱ハイユニ」があります。ちなみに、シャープペンシルの芯は、鉛筆の芯とは素材が違います。鉛筆の芯は黒鉛と粘土がほとんどで、その配合率で硬度と濃さが決まります。シャープペンシルの芯の場合は、あれだけの細さですから、粘土ではしなやかさと硬度とを両立できないのだそうです。ですから、黒鉛と合成樹脂を使うとのことです。シャープペンシルの字を消す場合は、プラスチック消しゴムじゃないと消えませんこの合成樹脂のせいで、譜面への書き込みが舞台照明を反射してしまうことがあります。楽譜への書き込みにはシャープペンシルを使うな、と言われるゆえんはこのようなところにあります。

 鉛筆の原型は古代にまでさかのぼり、黒鉛を使った鉛筆は16世紀には使用されていたそうで、日本でも徳川家康がヨーロッパ製の鉛筆を使っていたといわれています。鉛筆は、かなり古くから現在まで愛用されてきた便利な筆記用具であることは確かです。なぜ一般社会ではあまり鉛筆が使われないかといえば、その短所、簡単に消してしまえることも大きな理由のひとつでしょう。たとえば、ビジネスの契約書の署名を鉛筆で書いたとしたら、誰かに消しゴムで消されて悪用されてしまう可能性もありますし、手書きの帳簿や領収書も同じことです。そのため、一般社会では、消すことができないインクを使ったボールペン等で書かなければならないケースが多くなります。

 オーケストラの楽員は、指揮者が指示を出したり、コンサートマスターが弓遣いを変えたりするたびに、その鉛筆を手に取って楽譜に指示を書き込んでいきます。個人レッスンの場合、オーケストラほど書き直しをする事はないとは思いますが、やはり鉛筆が望ましいです。音符を書く練習は鉛筆ですので、その鉛筆を使って楽譜への記入もします。シャープペンシルですと、記入する際に折れると芯がピアノの鍵盤の間に入り込んでしまいます。これを取るには、調律師でないとできません。バイオリンも中に細かい物が入り込んでしまうと、取り除くのが大変です。レッスン室はシャープペンシル持ち込み禁止としている先生も結構多いです。

 当教室では、コロナ禍もあり楽譜への記入は講師ではなく、なるべくご自身でする様にお願いしています。接触を避ける為だけでなく、その方が受講者様にメリットがあるからです。現代は自分の手で字を書く機会は本当に減っていますが、自分で考えて手書きをするという行動には、多くの脳の部位の活動が必要です。考えるという行為には前頭葉のはたらき、考えを文字にするときには言語野のはたらき、そして、文字を書くためには、手の動きを制御する運動野と小脳のはたらきが必要なので、書くことで自分の気持ちが落ち着き脳にしっかりインプットされることが科学的に証明されています。

 

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