さくら貝の歌

2014年4月1日

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祖母が97歳で永眠しました。
桜が満開の日に、葬儀は行われました。

子供の頃は、お盆やお正月に祖父母宅へ両親と一緒に帰省しました。
庭の畑で野菜を収穫して選別するお祖母ちゃんの手は、太くて大きかった。
隣のトトロに出てくる勘太のお祖母ちゃんみたいに。
ご飯は、大きな口をあけてパクパクとてもたくさん食べる。
(逞しい人だなぁ)と子供心に思った。
晩年は、大正琴や日本舞踊を習っていて、
親戚が集まった晩餐には、踊りを披露してくれた。
逞しいお祖母ちゃんが、この時は不思議と淑やかに女性らしく見えた。
「まぁちゃんは、熱のある時以外は毎日練習するというのを聞いてね、
お祖母ちゃんも頑張らにゃ~と思って大正琴や踊りのお稽古やっとるよ。」と言う。
こう言われると、(今日は、練習やりたくないなぁ)と思う日でも、
(お祖母ちゃんは、今頃私が練習してると思っているかも…。)という気がして、
(やっぱり、やるか!)となったものです。

数年前、私は、お祖母ちゃんが居るこの豊川に引越して来ました。
お祖母ちゃんは特別養護老人ホームに入っていて、
娘である私の母親も、孫の私も、わからなくなっていました。
そこで、施設長さんに「バイオリン弾いてもいいですか?私って、わかるかもしれないから。」
とお願いをしたら、「だったら他の聞きたい人も聞けるように、エレベータ前の広いスペースで遠慮なく弾いてください。」と快く言ってくださった。
お祖母ちゃんが好きだった『さくら貝の歌』をはじめ、『月の砂漠』『浜千鳥』などを弾いた。
数回目に訪ねた時、私のことがわかった。
スタッフの方が、「この人だあれ?」と質問すると、「ま、さ、こ、・・・まご」と言った。
あの懐かしい声で。
何とも言えぬ嬉しさがこみ上げました。
施設長さんはじめスタッフの方々のおかげです。
深く感謝しています。
これが、私のボランティアの原点になりました。

葬儀の帰り(私も、お祖母ちゃんの様に年を重ねても探求心を持って生きよう)と思いながら家路についた。ふと気がつくと、車を運転しながら、「うるわしき桜貝一つ、去りゆく君にささげん~♪」と口ずさんでいました。

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